『位相と論理』を読んだ
『位相と論理』という本を読んだ。タイトル的に位相空間を使ったヤバい意味論をガンガンやる本かなあと思って読み始めたけど、実際には束論と位相の本だった。要するにStoneの表現定理+α。他の本でカバーされてる内容も多かったけど、束を前面に出した簡潔な議論とか、位相空間とフレームの随伴とか見所は多かった。
- 作者: 田中俊一
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2000/07
- メディア: 単行本
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読んでから気がついたけどこの本高い。びっくりした。
どんな本なの?
この本では論理はブール代数のことを意味している。ブール代数と位相空間、あるいはもっと一般に束と位相空間にはどういう関係性が有るのかを探っている。主要な結果は以下の2つである。
特段今すぐ使える知識が身につくという感じではなかったが、束、論理、位相、圏あたりの幅広い話に触れられて楽しいのでオススメ度は高い。まあ気が向いたときとか、ちょっと束やりたい気分の時とかに気軽に読むといいと思う。薄いし。圏を知ってないと最後の随伴のところのモチベがわかりにくいかもなあとは思った。ここが面白いところなんだけど。逆に圏を知ってる人が読むと、一般論の具体例が得られるし、真面目に証明読まなくてもいいので楽しいと思う。僕は楽しかった。
各章の感想
1 順序と束
名前の通り束論の基本をやる。Heyting代数が出てきたあたりから随伴が出てくる。束における随伴の存在定理が、各点Kan拡張で証明できて楽しかった。他にも随伴と極限の保存とか圏論で束論をやれて楽しい。この辺はSGL*1とかもそうだけど。
2 命題論理とブール代数
ここもそのままタイトル通り。命題論理がブール代数の例になっていることを見る。完全性定理を束論で示すのは簡潔で面白かった。最後に付値の空間に位相を入れて、後のStone双対性に話をつなげている。
3 構造とモデル
超べきでコンパクト性定理を示す。確かに束論の応用と言えなくもないよなあ。
4 ブール代数の表現定理
圏の言葉は使わないが、ブール代数との圏とStone空間の圏が圏同値になるのを見る。Stoneの表現定理自体は新井基礎論でやったけど、束の言葉で読んだのは初めてだし、圏同値くらいいい性質がなりたつのは知らなかった。良さ。
*1:Sheaves in Geometry and Logic